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■英国の教育をとりまく状況
教育状況の紹介に入る前に、英国の学校制度について説明しなければならない。
ご存じの通り、日本の義務教育における年齢は6歳から15歳までであり小学校の6
年間と中学校の3年間が義務教育にあたり、 たいていの児童は各地域の学校で教育を受けることになる。
一方、英国の義務教育の年齢は5歳から16歳までである。初等教育は5歳から11歳までで一般的には一貫して同じ学校で教育を受けるが5歳から7歳までの幼児教育、7歳から11歳までの下級学校の2か所で教育を受ける場合もある。また、中等
教育は11歳から16歳までで最も多いのが総合制中学校である。この総合制中学校
は、これまで定員に余裕がある限り生徒を受け入れなければならなかったが、政府は
定員の一部を選抜によって入学を許可する制度の導入を検討し、議論を呼んだ。中等
教育修了時には一般中等教育修了証書(GCSE)試験を10科目程度受ける。これは筆記だけでなく、教師の指導のもと14歳からの2年間をかけてレポートや作品などの
コースマークも評価の対象とされている。しかし、たとえ試験に不合格であっても学
校の卒業には差し支えない。
一方、1988年教育改革法は学校教育に1944年教育法以来の大革新をもたらし
た。従来、学校のカリキュラムは各学校、教師に委ねられていたが、これにより初め
て全国共通カリキュラムが法的に制定された。また、目標への到達状況を評価するた
めに7歳、11歳、14歳、16歳の児童生徒を対象に全国共通テストが実施される
こととなったが教員の反発を招いたのも事実だ。また、公立学校の地方団体からの独
立化を認め、財政権限(予算配分)や人事権限を学校に委譲し、全国共通 テストの結
果公表により、子供の獲得数とそれに応じた予算配分による学校間の競争にさらされ
ることになる。 次に、義務教育修了後の教育についてだが、日本の場合、16歳以上の教育としては
大まかには高校(3年間)に進学し、さらには短大(2年間)大学(4年間)、大学院(2年間)また各種専門学校(2年間)といった進路をたどる者もいれば、義務教
育修了時点でそのまま社会にでる者もいるというのは言うまでもない。 これに対し、英国の義務教育修了後の選択肢は多岐にわたる。学校教育をこの時点で
修了して就職したり、継続教育カレッジで技術教育などの専門分野教育を受けたり、
大学に進学したりする。大学に進学するには、上級一般教育修了証書(GCE)の成績が3科目程度必要である。
そのほか英国の特徴として、多種多様の継続的成人教育機関 が存在する。主なものをあげると地方団体が運営する成人教育センター、及びコミュ
ニティセンター、16歳以上を対象にして主に職業的教育を提供する継続教育カレッ
ジ、通信教育のオープン・ユニバーシティ、大学の公開講座、ボランティア団体など
がある。これらの機関で提供されるコースも多岐にわたり、主なものとして、識字教
育や基礎計算などの成人基礎教育、コンピュータ、資格取得コースなどの職業教育、
上級一般教育修了証書、工芸、外国語などの趣味、文化的コースがある。1992
年、継続教育・高等教育改革法により継続教育財源委員会が設立され、これまで公立であった継続教育カレッジが地方団体から独立した。
さらには、従来は地方団体を通じて成人教育も含めた継続教育に対し、国庫補助金が交付されていたのだが「継続教
育基金」の設置に伴い、1993年4月からは各機関に直接交付されるようになった
がこれは、より効果的な運営ができると認められた場合のみ上記の委員会から補助金
が受けられる仕組みとなっている。これらの成人教育の実施主体は、地方自治体、大
学、労働者教育協会など様々であるが、地方自治体が多くの部分を担っている。また、地方自治体の成人教育は地域の中の多彩な講師やボランティアによって支えられ
ているというのも大きな特徴の一つである。
次に最近の動向をあげてみよう。1998年秋の学校基本法(改正)で、教育当局が
学校運営に失敗したと思われるときには、国務大臣が直接介入できる権限が与えられ
た。例えば、学力向上の改善に失敗した学校の名前を公表したり、改善できなかった
学校の管理職を全て入れ替えたり、廃校にして同じ場所に新しい学校を作るという措
置を講じることができるようにした。また、教員の給与に学力向上の成果 を反映させ
るという斬新的な案もでている。そのほかアクションゾーンの設定により、優秀な教
員を雇用できるような財源をつけたり等の支援体制を作ることで全体的なレベルアッ
プを図り、成績不良校を減少させる努力をしているというのも日本との違いである。
さらに1999年に入り、成績不良校の改善を図るために、学校運営を外部に全て請け負わせる自治体もでてきた。全て外注するのではなく外部団体との長期パートナー
シップを確立し、民間共同で運営していくことにより教育サービスの民営化を回避し
ている地域もある。 このような教育分野における民営化の導入により、英国の継続的成人教育は都会はも
とより、どんな小さな町にいても様々なコースが行われ、どこに住んでいても何か学
びたいと思ったときに、何らかの学習機会が提供されるということは素晴らしいこと
である。しかも、それが人々の生活の一部となっており、ほとんどの住民が身近な成
人教育施設の存在を知っているというのも驚きである。 日本の教育との比較をこうした点からみると、長い歴史によって培われてきた英国の社会教育は、難民や少数民族の住民のための英語教育や長期失業者のための職業訓練
を提供するなど切実なサービスの充実にあると強く感じた次第だ。日本の教育は義務
教育においては負けていないが、成人教育となると随分、差があるのではないかと思われる。日本においても今後、英国と同様に社会教育、成人教育の役割というものが拡大していくと考えられるが、今、何が求められているのかをしっかりと把握し、社会教育に反映させていくことが重要な課題である。また、少子化の今、外国人を地域
社会の一員として受け入れ、育てるためにはどのようにすれば良いか考えていかなければならないし、何より私たち日本人が社会教育とはどういうものなのか理解していく必要があるのではないか。そして、21世紀に向けて日本の成人教育も学びたいとき、学びたいものが、学びたいところで提供できるような教育制度に確立されること
を期待致したい。
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